釧路 その5
釧路の居酒屋を語る上で欠かすことが出来ないのが「炉ばた」だ。
いつぞや全国的なろばたブームというのが起こって、
各地で"ろばた焼き"を売り物にする居酒屋が急増したが、
本家本元、正真正銘のろばたをみると、いかにインチキな代物であったかわかる。
この「炉ばた」がろばた焼きの元祖である。
釧路の盛り場、末広町。夜のネオンが輝く一角にそこだけ薄暗い建物がある。
閉店かと思って前を通り過ぎようとすると、行灯のような灯りに「炉ばた」とだけ書かれている。
「あれ、この店営業してんの?」と疑問に思い、店の前で思案していると、客が数名入っていった。
「これは試さなきゃ!」と好奇心丸出しで後に続く。
中に入ると、またびっくり。真っ暗な店内にランプが点っている。
真ん中には正真正銘の囲炉裏があり、囲炉裏に横には老婆がちょこんと座っている。
囲炉裏を囲むようにカウンターがある。
最初は店内がよく見えなかったが、暗さに目が慣れてくるとカウンターは満席、
壁際に長いすがあり、そこで客が待機していた。
ようやく空いて、カウンターに腰掛け注文する。
囲炉裏の上に干物が干してある。
囲炉裏で婆さんがほっけを焼いていた。
実に大ぶりでじゅうじゅう油が出てくる。
本州ではお目にかかれないボリューム感だ。
酒を注文すると、囲炉裏の横で温めていた甕から汲んでくれた。
網焼きにほっけ。甕に酒。おまけに婆さん。
実に絵になる。これだけで十分。気持ちよく飲んで食えた気分になる。
いわば田舎暮らしの擬似体験ともいうべきものだ。
うまい商売を考えたものだ。
瞬く間に全国にろばたが広まったのも納得である。
勿論、末広町界隈でもろばたの成功にあやかって同様の店が多数存在していた。
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