●風水緑のまちづくり学・フィールドワーク
環境活動に必要な情報や能力の向上を図ることを目的とした5回連続のスキルアップ研修の2,3回目は、
大阪まちプロデユース主宰の山根秀宣氏をガイドに迎え、中之島〜北浜界隈と空堀界隈のフィールドワークを実施しました。
山田も両日、サブガイドとして主に環境系の話を中心に参加しました。
全5回の内容
1.「風水緑のまちづくり考〜まちづくり三法改正を受けて」
2.風と水と緑のまちを歩く1「都心の自然再生〜グランドワーク」
※中之島〜北浜界隈へのフィールドワーク
3.風と水と緑のまちを歩く2「史と景の地域力再生〜エコミュージアム」
※ 平野界隈へのフィールドワーク
4.ワークショップ1「風水緑のまちづくりデザイン」
5.ワークショップ2「風水緑のまちづくりデザイン」
◇2009年1月24日(土) 中之島〜北浜界隈
中之島〜北浜界隈は大阪市内でも明治〜昭和初期の近代建築が残る地区。
同時に最もよく水の都・大阪を感じさせる、水辺と調和した風景が印象的なエリアです。
フィールドワークでは主に歴史・建造物関係の説明を山根さんにしていただきました。
まず大阪証券取引所から。
  いわずと知れた北浜のシンボル。江戸時代の金相場会所以来の流れとなる大阪経済の中心地です。
2004年、改築によって近代的な高層ビルに生まれ変わりましたが、
ファザードの部分は昭和初期に建てられた建築様式をそのまま残しています。
創建当初のイメージを復元したステンドグラスが楽しめるホール部分は、今では誰もが入ることができ、
参加者の多くが熱心に写真を撮っていました。
正面玄関前には、近代大阪経済の発展の礎を築いた五代友厚の像が、近年設置されました。
堺筋は御堂筋が出来るまでは、江戸時代以来の大阪のメインストリート。
この界隈に多くのビルが建てられ、それらのうちのいくつかは現存しています。
ここから しばらくは堺筋沿いの建築群を見ていきました。
まずは新井ビル。小さいながらも風格のある外観から分るように、
ここは元々は銀行の建物で、その後ステーキハウスなどに利用されていましたが、
現在は純生ロールで人気のGOKANが店を開いています。
次の高麗橋野村ビルはガスビルや大阪倶楽部を設計した安井武雄の作品で、
アール部分はどことなくガスビルを思い起こさせます。ここにはサンマルクカフェが入居していました。
隣は和菓子の老舗菊屋の本店です。贈答用にこの店の最中を口にした経験を持つ方は結構いるのではないでしょうか?
この場所から堺筋を隔てて見える和風建築の家屋は小西家住宅。
ボンドのコニシの本社屋として今でも使われています。
明治の中頃に建てられた時はもう少し広かったようですが、堺筋の拡幅工事により軒切りされたということです。
フィールドワークはここから堺筋を離れて西へ向かいます。
なにやら真っ赤なケバケバしい建物が見えてきました。

「BARアチャコ」と書かれています。
実は、かの伝説的漫才師・花菱アチャコのお孫さんが経営するバーだそうです。
意外なところで意外な名前に出会いました。
それにしても…
奇抜といえば奇抜すぎます。やはりこれがアチャコ師匠のイメージなのでしょうか。
次に現れたのは本吉兆。
かなり誤解されているようですが、かの世間を騒がせたのは船場吉兆で、廃業の憂き目に遭いました。
こちらは同じく湯木貞一氏を創業者とするも、船場吉兆とは全く別の経営。
大阪を代表する超高級料亭として、未だ健在です。
その本吉兆に隣接する旧シェ・ワダ店舗ビルより、再びテーマは近代建築に戻ります。
赤レンガの外壁が印象的な旧シェ・ワダ店舗は辰野金吾・片岡安によって設計されました。
辰野といえば明治を代表する名建築家。日銀本店・大阪支店、東京駅駅舎、中之島公会堂などを手がけています。
シェ・ワダは本格フレンチを食べさせてくれる店として有名でしたが、
残念ながら先ごろ閉店しました。現在は別の飲食店が入っているようです。
更にこのビルの南隣に浪花教会があります。
宣教師であり、建築家であり、メンソレータムで名を馳せた近江兄弟社を設立した実業家でもあった
ヴォーリスの設計によるものです。
ほんと、この界隈は油断していると、思わぬ高名な建築家の名前に出くわしてびっくりさせられます。
角を曲がるたびにいろんな発見がある。まち歩きの醍醐味でしょう。
次に休憩がてら、昆布の老舗・神宗の淀屋橋本店を訪れました。
ビルの中に、まるでテーマパークのように江戸時代風の商家が再現されています。
蔵の窓からは人形浄瑠璃「お染久松」のお染の文楽人形が顔を出していました。
店内は昆布商品の数々を販売しているとともに、店舗や大阪の商家の歴史を記した

資料や映像もあって、資料館としても訪れる価値があります。
私はここで、昆布の煮汁を使って味付けをした「コメッコ」を購入しました。
この本店でしか販売されていない限定物です。
一味違う風味が楽しめますよ。
 
ここで一旦御堂筋に出ます。
今まで歴史・建築関係のお話をすべて山根氏にお任せしていた私ですが
ここで環境と絡めた話を少ししました。
かつての百尺制限と呼ばれたビルの高さ制限は、都市景観として優れたもので、
均整の取れたスカイラインと空の広がりは、ヨーロッパの主要都市でも見当たらないということです。
また、地上を彩るいちょう並木は美しく、この道路を作った当時の大阪の文化力の高さは並々ならぬものがあったと思います。
秋の銀杏拾いは風物詩でもありました。
然るに現在、高さ制限は撤廃され、いちょうは臭気の発する実のなる雌株から
臭いのしない雄株に植え替えられつつあり、銀杏拾いもいずれ見られなくなるでしょう。
色々意見の分かれるテーマですが、大都市は高層ビルでなければいけないという思い込みや
臭いを消し去る見てくれだけの自然派的発想であるように思えてなりません。
さて、大阪の文化レベルの高さについて触れましたが、
懐徳堂という江戸時代の大坂町人が建てた学問所があったことはご存知でしょうか?
現在は石碑だけが残っていますが、多くの有名な学者を輩出したという点でも、
運営を町人が私費を投じて行なった点でも、かつての大坂は学問のまちでもあったのです。
これは現存する適塾についてもいえます。
緒方洪庵が開いた蘭学塾で、福沢諭吉、大村益次郎といった
幕末〜明治期の著名人を輩出した学問所でありました。
ちょうど、HNKで緒方洪庵を主人公にした時代劇が放映されていたこともあって、
話題はおのずとその方面へ流れました。
山根さんからは、塾生にまつわる微笑ましいエピソードを語っていただきました。
適塾の並びにあるのは愛珠幼稚園です。
これも全国的に珍しい建物で、看板がなければ誰もがお寺かなと思うでしょう。
幼稚園と説明し、更に現在でも現役であるというと、参加者全員驚かれていました。
ここからフィールドワークは北へ向かい、栴檀木橋を渡って中之島に入ります。 中之島公会堂こと大阪市中央公会堂も大阪のシンボルの一つです。
これも大阪市民が私財を投じて建てられたものだというのは有名な話で、
オーナーの岩本栄之助はその悲劇的な最期と共に、中之島の歴史に名が刻み込まれた存在です。
ここでは内部の岩本記念館を見学しました。
また、中之島公園についてはこの夏開催される「水都大阪2009」への言及もありました。
堂島川と土佐堀川に挟まれ、水の都大阪を象徴する場所は、現在急ピッチで整備が進められています。
水に親しむ空間を作ろうと、周辺飲食店が川床を展開するという計画もお聞きしました。
ライオン像で有名な難波橋を渡って、再び北浜へ戻ります。
証券取引所の北側にある北浜レトロビルも築100年近い建築物です。
現在は女性に人気の紅茶とスイーツの店として活用されています。

いよいよフィールドワークも終盤です。 高級料亭で有名な花外楼を訪れ、この場所で開催された
近代日本の針路を決定するため大久保利通、木戸孝允、板垣退助らが集まった大阪会議についての説明を受けました。
 
店の外壁には大阪会議のレリーフが飾られていました。花外楼の女将さんも顔を出して挨拶されました。 最後は近くの山根さんの事務所に集まり、本日のまとめを行ないました。
私からは緑被率の話をして、大阪は全国の主要都市中、緑が占める面積が格段に小さいことを指摘し、
ヒートアイランドを抑制する風の道構想についてお話しました。
歴史の話が大半を占めましたが、都市部における風・水・緑を感じていただけたのではないかと思います。
◇2009年1月31日(土) 空堀界隈
前回に引き続き、山根さんにご案内いただいたのは空堀地区。
古い町屋が残り、路地(ろーじ)の光景が今も残る下町として、
また、これらの町屋を活用したショップが展開する地区として近年注目されてきたまちです。
この空堀も山根さんの活動テリトリー。まち歩きの最中に出会う馴染みの顔顔顔。
すっかり地域に溶け込んでいます。
訪問先も地域に密着したお店の数々。前述の町屋を活かした事例が目立ちます。
順に挙げていきますと、ちんどん通信社、釜戸ダイニング縁、楓ギャラリー、ぽこぺん、デイサービス陽だまり、ギャラリー風雅、
からほり亭、パブデッシャロ、町屋再生複合施設 惣・練・萌となります。
また、地域の背骨ともいうべき商店街があり、そこからはこんぶの土居を訪れました。
上町台地に展開する起伏にとむお祓い筋、熊野街道といった街道や、
戦火からまちを守ったという言い伝えが残る榎木大明神も、生活感溢れるまちを彩ります。
新たな名所として、蔵とその前庭を活用した憩いのスペースが完成したばかりです。
スペースには水琴窟が設置されていました。
最後に地元出身の作家、直木三十五を記念した直木記念館(萌2階)で本日のまとめを行いました。
記念館といいながら、書斎をイメージしたシンプルな内部で、
のんびり読書をして過ごすにはいい空間です。
生活環境という視点に立ってみれば、急速に都市化が進む大阪市内の中心部で、
このような生活の匂いを守り続ける空堀のまちは希少な環境資源であるといえるでしょう。
主催: 大阪市立環境学習センター(生き生き地球館)
運営協力:グローバル環境文化研究所
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